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【ランチェスター戦略の成功事例】ひとつのメーカーに特化したPC専門誌で成功

CATEGORY : ブランディング用語集

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UPDATE : 2019.07.04

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

ソフトバンクは「メーカー特化型パソコン専門誌」で売上4倍に

学生向けプランとiPhoneの先取りで大成功

軍隊の戦闘力を武器の性能(武器効率)と兵力数で数式化する「ランチェスターの法則」。

もともとは戦時中に軍事目的で研究・活用され、現在は「ランチェスター戦略」と呼ばれ、マーケティング戦略の理論として活用されている。

ランチェスターの法則の大きな価値は、強者の戦い方と弱者の戦い方を導き出したことだ。

市場でライバル会社に対して後手を踏む企業が、ニッチ市場を開拓する地域やターゲットを極限まで絞り込む特定の分野に全リソースを注ぎ込むといった戦略を取ることで、成功を勝ち得ることができる可能性があるのだ。

「ソフトバンク」は、ランチェスターの法則を利用した戦略を所々で展開している企業である。

1980年代、ソフトバンクはパソコン用パッケージソフトの流通事業の傍ら、出版社「ソフトバンククリエイティブ」を立ち上げ、パソコン雑誌の出版を開始した。

あくまでも、パソコン関連商品の売上げとの相乗効果を狙った出版事業だったが、このパソコン雑誌が、他には類を見ない専門誌として大ヒットを収める。一般的なパソコン雑誌が多くのメーカーの製品を取り上げるものだったのに対し、ソフトバンククリエイティブが出版したパソコン雑誌「Oh!PC」は、NECのPC8000シリーズの専門月刊誌。「Oh!MZ」は、シャープのMZ-80Bシリーズの専門月刊誌だった。

この2誌のヒットにより、ソフトバンククリエイティブの売上実績は初年度8億円、翌年には35億円に達した。出版事業において他社を追いかける立場でありながら、1メーカーに特化したパソコン専門誌という武器で、他のパソコン雑誌に勝利した結果である。

また、ソフトバンクは2006年に「ボーダフォン」を子会社化し、移動通信事業へ参入した。当時の携帯電話業界はNTTドコモ、auがシェアをリードし、ボーダフォンはそれに続いての参入だった。

ここでソフトバンクが取ったのは、一定の時間帯の通話料金を0円にし、メールを無料にするなどの低価格戦略。学生をターゲットに絞り、学生向けプランを展開したのも当時としては画期的だった。同業他社が思いもつかないような料金設定とターゲット設定で、ソフトバンクは一気にシェアを拡大していった。そして日本で初めて「iPhone」を販売し、業界の先を行く存在として広く認知されることになったのだ。

ソフトバンクは、移動通信事業に参入する前からブロードバンド総合サービス「Yahoo!BB」などを低価格で提供していた。これらのサービスが継続課金である点も成功理由だが、この低価格路線での戦いは、ソフトバンクの得意とする戦略の1つと言えよう。

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