2000年初頭、柔軟剤を使用する世帯は60%を切り、柔軟剤市場は縮小傾向にあった。そんな縮小しつつある市場で、P&Gの柔軟剤「バウンス」も、シェアを落としている状況であった。
P&Gはその理由を探るために、ユーザーのインサイト調査を実施。そこから導き出されたのは、消費者の「柔軟剤を使う」という行動が惰性になっていること、そして商品間の差別化が明確にできないまま、企業間で価格戦争を繰り広げているという状況であった。
こうした市況を踏まえて開発されたのが、柔軟剤「レノア」である。レノアで新しく打ち出した機能は「防臭効果」。柔軟剤に消臭という要素を加えることで、新たな市場創造とシェアの奪還を目指したのだ。カテゴリを刷新するときに彼らが注意したのは、従来の柔軟剤からイメージが離れすぎないこと。イメージを大きく変えるとユーザーや小売店から受け入れてもらえないリスクがあり、かといって違いが伝わらなければ意味がない。
そのため、彼らは商品コンセプトやパッケージの設計を何度も繰り返し、テストを重ねることで絶妙なバランスを見出した。テレビCMでの訴求メッセージも「柔軟剤でこんなことも!?」と、あくまでも柔軟剤であることを強調するように工夫した
結果として、「レノア」は発売直後から爆発的にヒットし、発売後6年間で柔軟剤市場を1.8倍に拡大することに貢献した。今や柔軟剤と「香り」のイメージは切っても切り離せないほどの関係にまでなっている。その先駆けとなったのがP&Gのレノアなのである。