コストリーダーシップ戦略とは、マイケル・E・ポーター(MichaelE. Porter)によって提唱された競争戦略の1つ。競合他社よりも相対的に低コストで製品やサービスを提供することで競争優位性に立つこと。つまり、コストを下げることで低価格を実現し、それを武器に顧客を集める戦略のことを指す。
ユニクロは、アパレル業界でいち早くコストリーダーシップ戦略を成功させた企業である。
多くの業界がそうであるように、アパレル業界でも販売の過程で中間卸売業者が入るのが従来は一般的だった。生地製造や縫製、企画、販売を行う企業がそれぞれに存在し、その都度中間マージンが発生したため、製品の価格は一定のラインを割ることがなかったのである。
その中で、ユニクロは国内のアパレルメーカーでは他社に先がけて「SPA化」に取り組んだ。SPAとは、「製造小売業」を意味する。メーカーの機能と販売店の機能を併せ持った業態のことで、自社で企画、製造、物流・販売などの全てのプロセスを行う。
このビジネスモデルは、中間マージンなどのコストを最小限まで削減し、低価格で高品質な製品を提供することを可能にする。他社と同等の製品を低コストで製造できるため、価格競争で打ち勝つことができるのだ。ユニクロのコストリーダーシップ戦略成功の鍵は、このSPA化にあった。
SPA化によるメリットは、製品の高品質・低価格化に留まらない。その影響は新商品の開発や店舗展開、サービス向上などにまで及び、全てに好循環をもたらしている。
自社工場での生産は、徹底的な在庫管理と効率的な流通を可能する。保温機能や発汗性・防臭性に優れたオリジナル機能性製品の開発にも積極的で、「商品名=機能」という錯覚を生むほどに消費者に浸透した商品もある。新しい常に顧客を飽きさせない商品開発や店舗づくりが、顧客満足度のさらなる高まりに繋がっている。
「カジュアルウェア」という、それまでのアパレルメーカーに軽視されていたカテゴリーに着目したことも功を奏し、現在のポジションを築き上げたユニクロ。
安売り競争が激化するアパレル業界において、ユニクロは、コストリーダーシップ戦略をきっかけに、単なる安売りではない「ユニクロ」というブランドの確立に成功したのである。