ショベルカーやブルドーザーなどの重機は、建設現場や工事現場でよく目にするものの、重機メーカーとなると一般の消費者にとっては決して身近なものではないだろう。それは世界最大規模のメーカーであっても同じ。
「CAT」のマークでおなじみのCaterpillarは、1925年に設立された伝統のある重機メーカー。世界で最も名高い工業ブランドとも言える。彼らのビジネスは典型的なBtoBモデルであり、当然これまで一般消費者に対するマーケティングは重視してこなかった。
しかし2000年代に入り、ブランドのさらなる成長が必要だと考えた同社は、ブランドプロミスを再定義し「Built for it」というキャッチフレーズをつくる。そして、ブランドを守り、さらに成長し、価値を高めていくことを目的に、マーケティング手法を大きく変える。
彼らは「BUILT FOR IT TRIALS」というYouTubeチャンネルを開設。第一弾として公開された動画は、自社の重機2台が重さ600ポンド(300kg弱)もある木材を使ったジェンガゲームを競い合うものだった。
その斬新でユニークな動画はすぐさま話題となり、200万回以上の再生数を記録(現在は580万回を超える)。その後、「水たまりに落ちたiPhoneを重機で壊すことなく掴み取る」動画など次々とヒット作を連発。誰も見たことがないコンテンツとしての魅力はもちろんのこと、正確で繊細さを求められるゲーム内容はCaterpillar社の重機の質の高さや技術力をアピールことにもつながる。
これら動画が売上にどれだけ直接寄与したかを計測するのは難しいが、顧客からの反応は非常に好意的で、また一般的なブランド認知やブランドイメージの向上に貢献していると、グローバルブランドマーケティング責任者のリチャードソン氏は語っている。
また、このコンテンツマーケティングは、同社にとって嬉しい誤算を生んだ。それは、同社で働く従業員たちが盛んに家族や友達に動画をシェアしたということ。コンテンツ拡散を後押しするとともに、従業員のブランドに対するプライドや肯定的な気持ちを創出したことも、この施策の大きな成果であった。