ファミリーレストランの「ガスト」は、2019年3月現在、全国に1,364店舗を展開するレストランチェーン。すかいらーくグループがチェーン展開する飲食店の中でも一番の店舗数を誇り、グループ総店舗数の4割以上を占めているガストは、2014年にモバイル向けアプリ「ガストアプリ」を配信している。これによりO2Oマーケティングを成功させ、ガストは急成長を遂げたのだ。
ガストアプリの主な機能は、アプリ限定クーポンの配信とスマホの機能を活かしたプッシュ通知である。GPS機能を利用した店舗検索ができ、チェックインシステムは無料会員登録をすると店舗利用によってポイントが得られるしくみだ。さらに会員限定のクーポンもあり、会員登録をしてアプリを利用することで得られる顧客のメリットは絶大である。
さらに、このアプリは会員一人ひとりによって配信する内容が異なるのも特徴だ。年齢や子どもの有無、誕生日などの属性はもちろん、クーポンの利用履歴や使用頻度に合わせて配信するクーポンの種類や頻度を変えているのだ。
こうしたセグメンテーションも功を奏し、2014年10月に配信開始された「ガストアプリ」は、1ヵ月半ほどで100万ダウンロード、同年の12月末までには150万ダウンロードを達成。さらに配信から7ヵ月後には300万ダウンロードという驚異の勢いで顧客の間に広がった。スマホの普及がアプリの普及を後押しし、アプリから発信されたクーポンは利用率が高い。
実際、ガストの広告の7割を占める新聞広告のターゲットと比べて、アプリのユーザー数は10分の1に過ぎないが、クーポンの利用者数は1.5倍に達している。コストでいえば新聞の100分の1程度で、マーケティングROIは大幅に改善したということになる。
アプリの自社開発は、容易なことではない。コストだけではなく知識や技術の面でもハードルが高いのは事実である。しかしガストの事例を見れば、さまざまな条件をクリアしてでも取り組む価値があると言えよう。
O2Oマーケティングには、いくつかの手法がある。その中でも、クーポンの配布はオーソドックスな取り組みだが、ガストアプリは、簡単なアンケートなどの顧客情報を収集する役割も果たしている。こうして得たデータが分析されマーケティングに活用されていることはガストアプリの存在価値をさらに高め、O2Oマーケティングの二次効果を生んでいるのである。