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【ニューロ・マーケティングの成功事例】
脳科学で消費者心理を捉える!老舗酒蔵の大胆な挑戦

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.12.04

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

「体験」を買う消費者に対して、老舗酒蔵ができることとは?

脳波測定やアイトラッキングでCMに対する反応を調査

脳科学に裏付けされたCMやパッケージで、ブランドの若返りに成功

脳科学で消費者の深層心理を捉える!

ニューロ・マーケティングとは、脳科学の専門的知見や理論を活用した新しいマーケティング手法。

従来のマーケティングでは、調査や観察を行うことによって顧客の心理や行動メカニズムを分析しようとしていた。ところが、顧客の発言や行動には様々な思惑や配慮、恣意性が生じることもあり、顧客の真の姿や思いを探り当てることは難しい。

そこで注目されるようになったのが脳科学を活用したマーケティング手法である。

顧客自身でも説明しにくい行動や意識の根底が、脳の反応を分析することで明らかになってくる可能性があるとして、ニューロ・マーケティングは研究・実践が進められている。
 
 
 

「体験」を買う消費者に対して、老舗酒蔵ができることとは?

兵庫県神戸市東灘区の「白鶴酒造」は、創業1743年の老舗清酒メーカーである。

270年以上にわたり伝統的な技術と新しい技術を融合させながら、日本を代表する日本酒メーカーとしての地位を維持してきた。

その長い歴史の中で、白鶴酒造は時代の移り変わりに伴う消費者の価値観の変化に直面した。市場には商品が溢れ、消費者の求める価値は「所有すること」から「体験すること」に移り変わっていったのだ。

消費者は体験を買う。そして、求める体験は消費者ごとに異なる。

そのため、メーカーは消費者の本質をより深く理解しなければならない。すなわち消費者が何に感動を覚え、何が消費者を満足させるのかを知るための取り組みが必要になったのだ。
 
 
 

脳波測定やアイトラッキングでCMに対する反応を調査

消費者をより深く理解するためには、一般的に行われるインタビューやアンケートのようなマーケティング調査では事足りない。

消費者が発する言葉は「たてまえ」が多く、そこからは人の購買行動に結びつく感情を解明できない可能性がある。知りたいのは、さらに奥深くの本音の部分。言語化されていない消費者の「深層心理」である。

そこで、白鶴酒造は日本酒ブランド「まる」のブランド強化のために、消費者の商品に対する無意識下の反応を調査した。

これが、脳に直接的に問いかけるニューロ・マーケティングだ。

採用された「静態評価」という手法は、被験者が商品CMやパッケージをモニターで視聴している間の脳波や目線の動きを測定するもの。この調査で商品に興味を持つまでの段階の感情を評価し、合わせてグループインタビューを行い、購入を検討し意思決定するまでのプロセスに重要な意識を把握した。
 
 
 

脳科学に裏付けされたCMやパッケージで、ブランドの若返りに成功

そして、この脳科学に裏付けされたデータをCM構成やパッケージデザインに活かし、リニューアルを重ねた。

さらに、その成果を再びニューロ測定による数値で把握。パッケージは、より売り場で目を引くデザインに改定され、改善を重ねたCMの効果で「親しみやすさ」や「家庭的」といったイメージが伸長した。

結果的に、ブランドの若返りを成功させたのだ。

白鶴酒造は、以降も継続的にこの手法をブランディングに活かしている。

なお、老舗でありながらまだ研究段階にある新しいマーケティング手法を積極的に導入できた背景には、同社の「伝統を守りつつ、新しいものを取り入れる」という精神が正しく受け継がれてきたことも表しているのだ。

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