人の「感覚」に訴えかけ、態度変容を引き起こさせる
センサリー・マーケティングとは、消費者の感覚(センサー)に訴えかけ、知覚や判断、行動に影響を与えるマーケティング手法。
たとえば、人は気温が高かったり室温が高かったりする状況では、集団に同調しやすい傾向にある。
このように人の無意識に作用する状況を戦略的に作り出すことで、消費者の態度変容が期待できるというわけだ。
香りで、キャンプや学校の楽しい思い出を呼び起こす!?
「ハンズマン」は、九州地方で店舗展開しているDIYホームセンター。
取扱い品目の多さと、DIYに関するイベント開催や情報提供などの消費者に寄り添ったサービスで人気を博している。
しかし、ハンズマンに多くの消費者が集まる理由はそれだけではない。
店舗内に漂う木とワックスの匂いは、キャンプ場のロッジや一昔前の木造校舎などの記憶を呼び起こし、同時に楽しかった記憶や懐かしい感覚を思い出させる。
これは、嗅覚と脳の記憶を司る部分とが結びついているためだが、この感覚はハンズマンでの記憶として顧客の脳に残り、無意識に「ハンズマンに、また行きたい」と思わせることにつながっているという。
客の視覚を刺激する商品レイアウト
また、店内の商品レイアウトにも工夫が見られる。
商品パッケージの色を考慮して配置を変えることで店内を広く見せるテクニックや、あえて上の棚に重そうに見える商品を配置してインパクトを与える手法で、顧客の視覚を刺激。
さらにBGMは記憶に残りやすいオリジナルテーマソングが流れているだけでなく、噴水の音が店内に響き渡り、癒しの空間を作り上げている。
ちなみに、このテーマソングには数パターンあるが、ハンズマンのWEBサイトからダウンロードできるようにもなっており、ご当地ソングとして密かな人気を得ている。
手作業の売り場作りが、「温かみ」を醸成
一般的な小売店では売れ筋の商品を仕入れ、売れない商品は仕入れないように努めることが多い。
取扱い品目を可能な限り減らすのが効率的であり、そのための商品管理に一役を買っているのがPOSシステムだ。
しかし、ハンズマンでは大型店でもPOSシステムを導入していないという。また、売り場やPOPなどの店舗づくりを売り場担当者が手作業で行っている。
こうした一つひとつの「手作り感」を、きっと消費者は五感で感じ取るのだろう。
その証拠に、ハンズマンには「温かみがある」というブランドイメージが定着しているのだ。
近年のDIYブームが追い風となって、さらに売上を伸ばしているハンズマンだが、この「温かみ」という無意識の感覚も集客の要因になっていることは間違いない。