ECショッピングモール国内王者の楽天
日本で一番成功していると言われるECショッピングモールの楽天市場。
1997年にたった2人で設立し、わずか13店舗でスタートしましたが、20年後には国内EC総流通額3.4兆円、グローバル流通総額15.4兆円、売上収益1.1兆円を記録する世界的なECショッピングモールへと成長しました。
彼らがECショッピングモール事業を始めたのは比較的遅かったと言われています。
ではなぜ、楽天は国内ナンバーワンのECショッピングモールになれたのでしょうか?そこには様々な要因がありますが、今回はターゲティングに的を絞って成功した理由を紹介します。
また、現在はフィンテックや投資にも力を入れる楽天の大きな野望についても解説します。
インターネットに出遅れた人たちにフォーカスして成功
楽天の三木谷社長はネットショップを始めたいという人たちに向けて、何を売るかではなくどう売るかが重要だ、と何度も説いています。これは楽天自身にも言えることでした。
インターネット黎明期の1990年代後半、先駆者たちによって様々なネットショップが立ち上がり、インターネット通販の時代が幕を開きつつありました。
その中で、楽天市場がオープンしたのは1997年のこと。その時、彼らはターゲットを明確に定めたのです。
そのターゲットとは、インターネットに出遅れた人たち。
モノを売る側も買う側も、インターネットという新しい潮流に乗り遅れたが何とか流れに乗りたいという、アーリーマジョリティ〜レイトマジョリティの層にフォーカス。HTMLを理解できない初心者のために、簡単に始められるネットショップを格安の料金で利用できるサービスを作りました。
何事も、先手を取った人たちよりも出遅れた人たちの方がその母数は圧倒的に多いもの。その大勢のハートをガッツリ掴んだことで、加盟店の数を急増させ、事業を急速に拡大させることに成功したのです。
イノベーターやアーリーアダプターは楽天市場でモノを売ろうとは思いません。モノを売るときは自分でウェブサイトを作って売ります。しかし、顧客の数は楽天に対して圧倒的に不足していました。これが、多くの先駆的なネットショップが生き残れず、楽天が一人勝ちした要因の一つではないかと考えられています。
また、三木谷社長の言葉が示すように、彼らは楽天大学という制度をつくり、ショップ運営者に対して「売り方」を徹底的にレクチャーし、そのナレッジを惜しみなく共有していきました。これによって数多くのショップが自分たちで切磋琢磨して売上を伸ばしていくようになり、楽天も売上と企業価値をどんどん高めることになったのです。
楽天ポイントを武器に、エコシステムを拡大
楽天のビジネスは「プラットフォーム戦略」と呼ばれています。Amazonはもちろん、AppleやFacebookなど世界的な企業も取っているこの戦略。
楽天は「場の提供者=プラットフォーマー」の立場となり、その場に売り手と買い手が集まることで、店舗の出店料とインセンティブで稼ぐビジネスモデルです。楽天市場に集まる人が増えれば増えるほど、楽天の売上も企業価値も上がり、またユーザーにとっての利便性も高くなっていきます。
ただ、楽天は単なるプラットフォームにとどまることなく、さらなる発展を遂げていきました。
たとえば、クレジットカードの「楽天カード」。彼らは圧倒的な楽天ポイント還元率をインセンティブに、楽天会員を中心とする楽天カードの利用者をどんどん増やしていきました。金融事業スタートから十数年後の2018年には、メガバンクを含む銀行系カードを抜いて取扱高1位となる快挙を成し遂げたのです。
さらに、楽天銀行や電子マネーの楽天Edy、楽天証券、楽天TVなど、新たな事業を次々と展開し、楽天エコシステムを強固なものにしていきます。同社の強みである楽天ポイントを軸に、楽天Payや楽天キャッシュといったキャッシュレスサービスも見事に普及させていきました。
携帯電話事業への参入、その先にある野望とは?
その楽天の次なる野望が、携帯電話事業への参入です。既存の大手キャリア3社の厚い壁の中に第4のキャリアとして勝負を挑もうとしているのです。
当初、商用サービスの開始時期は2019年10月と表明していましたが、サービスの要となる「基地局」の設置が遅延。試験サービスでも通信障害が発生して総務省から行政指導を受けるなど、その道筋は苦難の連続でした。
こうした紆余曲折を経て、ついに2020年4月8日。楽天モバイルが始動することになります。300万人が1年間無料、月額料金は2980円の1プランと、シンプルかつ安い料金体系が大きな話題となり、早くも携帯電話市場を騒がせています。
彼らがその先に見据えているのは、エコシステムの拡大。今や約70サービスにまで展開し、各サービスが楽天ポイントで紐付けされたエコシステムは、国内だけでも1億人の利用者がいます。そのサービスのほぼ全てが携帯電話で利用される今、携帯キャリアに参入することでさらに利用者を囲い込み、エコシステムを強固に拡大していくことを狙っているのです。
「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」をミッションに掲げる楽天。携帯電話事業という新しい挑戦によって、社会にどのような変革をもたらすのか。今後の動向に要注目です。
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