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知ってても気づかなけりゃ意味がないじゃないか

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2018.11.20

文責 : 一筆太郎

博多で、ブランディングにまつわる人たちが集まって酒を呑んだ。
それはそれは大いに盛り上がって、19時から始まった会は気がついたら1時をまわっていた。それから噂の八ちゃんラーメンで恐ろしく濃厚な豚骨を胃袋に入れて、胃は十分に侵されていたが、もう一軒。ホテルに着いたのは3時前だった。
 
 
その4時間後には飛行機に乗らなければならない。
朝7時の羽田行きに乗らなくてはならないのだ。起きれなかったら、やばい。そう思いながら、pinoを口に運び、本をパラパラとめくっていたらいつしか落ちていた。
眠りの底に。
 
 
「うわっ」と叫ぶように言って慌てて起きた。あーやっちまった、空が明るい。時計をみると5時56分だった。お、これは間に合うではないか。風呂も入らず寝てしまったのだが、風呂に入ろうとも思わず、とにかく飛行機に間に合うべくチェックアウトを済ませてタクシーを拾った。
 
 
空港には6時過ぎに着いた。早すぎた。そう、僕はまだ酔っているのだ。正常な思考など持ち得ていない。こんなことなら風呂に入って出ればよかった。そういえば、歯も磨いていない。そういえば歯ブラシがトランクにあるはず、歯磨きできる場所はあるかしら?なんて思いながら、リモワの鍵を開けようとすると、あ、開かない。こんなことは今まで一度もなかった。酔いがスーッと覚める。
 
 
まだ手荷物検査も通ってない。トランクには、いつもなぜ出す必要があるのだろう?と思いながら検査場前で出すPCが入っている。ヤバい。開かない。鍵穴はあるが、それはいざという時に空港の人が使うんだよと誰かに聞いた。ダイヤル式のパスワードが狂ったのだ。3つしかないが、それがいくつなのかまったく記憶がない。酔っているからではない。単に覚えてないのだ。
 
 
タクシーだ。タクシーの後部座席の足をおく狭いところにトランクを置いたのだった。お金を払うとき、トランクの中から財布を出して払った。お釣りをもらうときになんだか急かされているような気がして、レシートをしまうのもそこそこに財布をぽいっとトランクに入れて、トランクを無理やり閉めて引きずり出したのだった。あのときに違いない。
 
 
それにしても困った。だが、一か八か、とりあえず手荷物検査を突破してみようと思った。「この中には出さなきゃいけないとわかっているノート型PCが入ってますが、どうしてもトランクが開かないのです。」僕は懇願するように職員の方に言った。するとその方はチケットをかざしてください。と事務的に言ってすんなり通してくれた。きっと僕があまりに酒臭くて関わりたくなかったのだろう。
 
 
だが、これで第一関門突破だ。歯は磨きたいけど諦めることにした。とりあえずネットで鍵の開け方を検索した。出てきた解決策は3桁の番号をひたすら試せ。という鬼のようなアイデアだった。000からスタートして999までいけばどこかでたどり着くだろうというのだ。僕は気持ち悪くなった。ただでさえ、八ちゃんラーメンで大きなダメージをくらっているのだ。もう寝よう、僕は005で諦めた。
 
 
機内でも爆睡し、気づくと羽田についていた。羽田空港で鍵を開けてくれるところがあるのではないかと思って探したがなかった。そりゃ鍵を開けなきゃいけないのは緊急事態であり、緊急事態というのはいつどこで起こるのか想定できないのだから店舗を持つ必要などないのだろう。打ち合わせの時間もせまっていたのでオフィスへ急いだ。
 
 
オフィスで時間ができると、トランクがとにかく気になった。開かないだろうか。またダイヤルを回し始めた。今度は999から。適当にいくつかやってみて、やめた。僕には無理だ。ネットで検索すると鍵の救急車みたいなのがずらっと出てきた。もうこれに頼るしかない。とにかく僕は歯を磨きたいし、財布も書類も入っているのだ。
 
 
電話をしてみると、リモワのスーツケースは特殊で、金額は8000円からかかること、そして壊す可能性もあることを伝えられた。なんとか金額を安く済ませて、壊さずに済む方法はないだろうか。必死にネットで調べ、電話をした。
 
 
あーーーーー!僕は叫んだ。
 
 
そうだ、リモワに持っていけばいいんだ!リモワはオフィスから車で10分の距離に表参道店がある。早速電話をしたら修理をしてくれるとのこと。持って行くと、ものの5分で開けてくれた。さらに、コロコロのところがキーキー言ってたので油をさしておきましたよ、とのこと。なんたるサービス。8000円にビビっていた自分はいったいなんだったんだろう。
 
 
問題は鍵が開かないことだったけど、解決策は鍵屋さんにあるのではなく、メーカーにあるのだった。リモワは高級ブランドだし、サービスもいい。そんな簡単なことも気づかぬとは。
 
 
そして、偉そうに(いや、偉そうにしてるわけじゃないけど)、「問題はどこにあるのか?視座が変わると、善悪も変わる。」なんてタイトルで記事を書いていた自分をものすごく蔑んだ。視座変えるの大事だって言ったのは自分じゃないか。鍵が開かないから鍵屋さんに頼むのではなく、鍵のおおもとであるリモワに不具合が起きたことと思えばよかったのだ。知ってるだけじゃ知恵とは言えませんな。

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