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スターバックスのようなブランドは
どうしたら生み出せるのか?

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

UPDATE : 2018.11.07

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

スターバックスのブランドはなぜ強いのか?がわかる

スターバックスのようなブランドのつくり方がわかる

『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』
ジョン・ムーア著
花塚恵訳
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2014年4月20日発行


 
 

スターバックスのブランドはなぜ強いのか?

スターバックスはブランドを語る上で欠かせない、教科書のような憧れのような存在である。
 
バリューチェーンではスターバックスの強さは、コーヒー豆の仕入れにあるとか、サードプレイスとしての店、インフラにあると言われるが、僕は色と笑顔が強く印象に残っている。
 
まず、スターバックスの緑が強い。雑踏の街中であっても、あの緑はすぐに見つかる。それは雨の日に最初に落ちてきた雨粒を感じるほどのスピードだ。黒や白を背景にスターバックスの緑が使われると、その威力はさらに強まる。オシャレにも感じる。
 
  
もう一つ、笑顔。マクドナルドのスマイル0円は有名だが、それをメニューにしなくともスターバックスの店員はいつも笑顔で明るい印象がある。長蛇の列ができてテキパキとオペレーションしているのだが、店員の誰もがどこか楽しそうなのだ。
 
  
本書は、溢れんばかりの魅力を持つスターバックスのブランドがどのように構築されているのか、またそれを維持できているのか、46のルールとして紹介されている。
 
 

ブランド・マネジメントは生涯の仕事です。ブランドは非常に脆いものですからね。スターバックスに限らず、成功している企業やブランドは、いつまでも成功を保証されているわけではありません。だからこそ日々努力するのです。
—ハワード・シュルツ

 
  
ブランディングという魔法の粉を振りまけば、勝手に人を惹きつける息の長いブランドができる」というのは幻想であることをスターバックスは教えてくれる。それは上に引用したスターバックスの創設者はワード・シュルツの言葉からもわかるだろう。
 
 
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スターバックスエクスペリエンスがブランドをつくる


 
スターバックスの顧客提供価値は、すべてコーヒーを味わうときに体験することをとことん考えた結果の産物である。それが強いブランドをつくった。

当初から必死だったことは
・ 最高品質のコーヒー豆の調達とロースト(焙煎)
・ 濃厚で力強いコーヒーを楽しむ方法を顧客に伝えること
・ 顧客が居心地よくくつろげる空間をつくること

だったという。
 
これらがスターバックスエクスペリエンスという他にはない顧客体験となり、強いブランドの核となった。
  
   
本書はブランドに関係する人すべてに役に立つと思う。ルールとしてまとめられているので、気になる部分を読むだけでも参考になるだろう。

46のルールはこちら。
 
1. ビジネスと正面から向き合う過程でブランドは生まれる。
2. マーケティングはすべての社員の仕事の一部である。
3. 「どこにでもあるもの」を「他にはないもの」に変えよ。
4. ありのままを伝えよ。つくられた話はもういい!
5. ブランド・マネジメントとは、評判管理である。
6. ブランドを広めたければ、まずカテゴリーを世に広めよ。
7. 低価格戦略は、結局高くつくと心得よ。
8. 売上を伸ばす方法は3つしかない。
9. 強いブランドはブランドの「負債」より「資産」が多い。
10. 最大ではなく、最高になれ。
11. 出店が最大の広告である。
12. お客様に伝えるべきは「特徴」ではなく「効用」である。
13. マーケティングは真実を語るものであれ。
14. グッズは関連性のあるものに限るべし。
15. 広告よりもモノを言うものーそれは「行動」である。
16. 数を絞って実行すれば、より大きく、優れた結果が得られる。
17. 常にチャレンジャースピリットを持ち続けよ。
18. 注目に値することが注目される。
19. ニーズではなく、ウォンツを満たせ。
20. お客様にはきっぱり「イエス」と言おう。
21. 約束以上のことをせよ。
22. 地域社会にとけ込みなさい。
23. 親切であれ、清潔であれ。
24. ふれあいはテクノロジーに優る。
25. 惜みなく与えよ。
26. 未来の成功は、過去の成功の中にある。
27. お客様を、その日限りの旅行者ではなく、日常に楽しみを求める探検家として扱え。
28. お客様に親愛の情を持ってもらいなさい。
29. 「壁」の声に耳を傾けよ。
30. より大きな成功を得る道を選べ。
31. すべてが大事であると心得よ。
32. 会社の「伝道者」を育てよ。
33. 従業員エクスペリエンスが社員にも会社にも成長をもたらす。
34. 従業員の声をきき、ミッションを活きたものにせよ。
35. リーダーこそ情熱的なフォロワーシップを取り入れるべき。
36. 従業員が見限るのは会社ではない。人だ。
37. ブランドは、人の情熱によって生み出される。
38. 自己満足に陥るな、現状維持に抵抗せよ、うぬぼれを打ち砕け。
39. ベテランと新人のあいだに架け橋をつくれ。
40. 経験に勝る情熱を持っている者を雇いなさい。
41. 参加することが最低の条件であると心得よ。
42. 「健全な話し合い」を推奨せよ
43. 組織図の中にお客様を位置づけよ。
44. 自分の仕事を前年比で評価せよ。
45. すべてを正しく行え。利益は結果的についてくる。
46. 世界を変える志を持て
 
 
 

「顧客が実際に気にとめるのは、新しいブランドではなく新しいカテゴリー」

どれも重要なルールだが、その中でも僕が気になったのは「6. ブランドを広めたければ、まずカテゴリーを世に広めよ。」だ。
 
『ブランディング22の法則』(東急エージェンシー出版部刊)でアル・ライズとローラ・ライズは「顧客が実際に気にとめるのは、新しいブランドではなく新しいカテゴリー」だと指摘した。

『ブランディング22の法則』
アル・ライズ/ローラ・ライズ著


 
スターバックスはこの言葉を証明するかのように、スペシャルティコーヒーというカテゴリーを広め、顧客を啓蒙することを会社のミッションとした。

・スペシャルティコーヒーというカテゴリーはどんなものか
・スペシャルティコーヒーの特長
・そしてスペシャルティコーヒーが目指すこと

この3点を顧客に意識づけようとし続けたのだ。


  
  
そもそもコーヒーというカテゴリーは古くからあるカテゴリーである。

その中に新しくスペシャルティコーヒーというカテゴリーをつくり啓蒙した。これは他の業界(カテゴリー)でも使える手段だ。

デービッド・アーカーはブランド・レレバンスと呼び、その方法を論じている。ラガーが主役だったビール業界にドライを持ち込んだアサヒスーパードライやハイブリッドカーなども、その成功事例にあたるだろう。
 
 
企業はブランドで決まるのではない。企業が行うビジネスの「カテゴリー」で決まるのだ。と本書でジョン・ムーアはいっている。
 
 
 

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