新しい商品・サービスの開発や、リニューアル、新ブランドの立ち上げなどに際して、欠かせないのが綿密な市場調査と具体的な戦略の立案。自分たちが勝負する市場はどうなっているのか、競合に対して自分たちの勝算はどこにあるのか、など、競争優位性をしっかりと把握し打ち出すことが成功への鍵となる。
そこで、競争優位性を見つけるのに役立つフレームワークをいくつか紹介しよう。
VRIO分析
VRIO分析は。自社の内部環境を把握し、強みや競争優位性を見出す分析手法。
経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の頭文字を取ってVRIOと呼んでいる。
1.経済価値(Value)
自社の経営資源が市場において経済的な価値があるかを分析する。この際に重要なのは、顧客が価値を認識しているかどうかということ。どんなに性能や技術が優れていても、顧客にその価値を認識されていなければ意味がない。
2.希少性(Rarity)
自社の経営資源が市場において希少性を発揮しているかどうかを分析する。希少性が高ければ競争優位性を発揮できるし、希少性が低ければ他社の参入を容易にする。
3.模倣困難性(Imitability)
自社の経営資源が模倣しやすいかどうかを分析する。模倣しやすい場合、現状では優位性があったとしても競合に追いつかれる可能性を孕んでいる。
4.組織(Organization)
自社の経営資源を有効活用できる組織体制かどうかを分析する。組織が整っていないと経営資源のメリットを十分に生かすことができない。
自社の経営資源が持つ強みと弱みを把握し、改善につなげることで競争優位性を高めるフレームワークがVRIO分析なのだ。
PEST分析
PEST分析は、企業やブランドのマクロ環境を分析するためのフレームワーク。
PESTは「政治的(Political)」「経済的(Economic)」「社会的(Social)」「技術的(Technological)」の頭文字を取っている。
フリップ・コトラーが提唱したフレームワークで、一言で言えば、事業を取り巻く外部環境を分析して競争優位性につなげる手法である。
プロジェクトを成功に導くためには、製品やサービスの質や優位性のみならず、景気や社会情勢、政治動向、法改正、テクノロジーの発展といった、自分たちでは統制不可能な外部環境=マクロ環境を調査することが欠かせない。
PEST分析でリサーチ対象となる項目には、下記のようなものが挙げられる。
Politics
・各国の政治制度
・国内、海外の政治勢力図
・法律、法改正
・治安維持、国防の取り組み
・国民の政治関心
Economy
・国内、世界の経済活動状況
・産業の台頭と衰退
・消費者心理
・物価、消費動向
・為替、株価、金利動向
Society
・国内、海外の人口動態
・世論トレンド、流行
・各国、各地域の文化的特性(言語・宗教など)
Technology
・普及デバイス
・新技術の発展と浸透
・知的財産の保有状況(特許など)
こうした外部環境要因を分析することで、事業のポテンシャルや将来性を予測したり、将来生じるリスクに備えることが可能になる。主に経営戦略の見直しを図るタイミングや、新規プロジェクトを立ち上げる際に有効なフレームワークであると言える。
コーホート分析
市場や商品の時系列データを分析する際に、同世代の人の生活様式や行動、意識などからくる消費の動向を調査する手法。
コーホートとは「出生をほぼ同時期にする人間の集団」の意。分析対象に「世代」の概念を取り入れることで、時代のトレンドを把握することを狙いとする。
コーホート分析では3つの視点から市場の変化を読み解いていく。
(1)加齢効果
年齢の変化によって生じる要因。人格形成期や家族形成期など、人間の成長過程やステージによる変化がこれに含まれる。
(2)時代効果
時代の変化によって生じる要因。たとえば、戦後間もない時代と高度経済成長期の時代では、社会環境がまったく異なる。この違いによる変化が時代効果である。
(3)コーホート効果
出生年代によって生じる要因。団塊世代、ゆとり世代など、同じ時期に生まれて同じ社会環境を共にした人間の集団から発生する要因がコーホート効果である。
こうした3つの視点から、分析対象の時系列変化の要因を見つけ出すことで、今後の重要予測や戦略に役立てることができるのだ。
ファイブ・フォース分析
アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した業界の競争要因分析のフレームワーク。
5つの脅威(フォース)が業界全体の収益を決めるという考え方で、この分析によって業界のどこに競争が起きているのかを明確にすることで、課題の抽出や今後の戦略立案に役立てることができる。
5つの脅威はこのように分類される。
(1)新規参入者の脅威
業界の新規参入のしやすさを表す。業界の参入障壁が低いほど、後続のブランドが現れやすく、当然ながら競争は激化して収益低下のリスクは増える。
(2)代替品の脅威
商品・サービス自体は異なるが、「提供価値」が同等の商品やサービスを指す。たとえば、マクドナルドと吉野家は業界が異なるが、「安く、早く、食事ができる」という提供価値において、両者はお互いに脅威となりうる。
(3)買い手交渉力の脅威
「買い手」とは商品やサービスの販売先のこと。売り手よりも買い手の力が強い場合、値引きなどの交渉が発生し、収益低下するリスクがある。
(4)売り手交渉力の脅威
部品や材料など、商品をサービスを作る上で必要なものを売る立場の力が強い場合、売り手に都合の良い条件を受け入れざるを得ず、収益が下がるリスクがある。
(5)既存競合他社の脅威
現状の競合が多ければ多いほど、競争は激化する。価格競争をしているのか、差別化競争をしているのかなど、競争の質を見極めることも重要である。