マルチブランド戦略とは?
マルチブランド戦略とは、特定の市場や製品カテゴリーにおいて、ひとつの企業が複数のブランドを展開する戦略。
たとえば、ファッション業界におけるファーストリテイリングのユニクロとGUであり、自動車産業における日産のリーフとノートである。
マルチブランド戦略のメリットは、
・各ブランドで複数のポジショニングを獲得して市場シェアを広げられる
・他社のシェア拡大や新規参入を防げる
・市場におけるリスクヘッジができる
・市場自体の活性化に寄与できる
などが挙げられる。
一方、デメリットとしては
・リソースが分散されるので、各ブランドの育成に時間がかかる
・各ブランドのポジショニング次第で、競合するリスクがある
といったことが考えられる。
マルチブランド戦略のメリットから考えると、比較的規模の大きい事業や、リソースの豊富な企業において、相性の良い戦略だと言えよう。
コカ・コーラは同一ジャンルでも複数のブランドを展開する
「コカ・コーラ ボトラーズジャパン(以下、コカ・コーラ)」は、清涼飲料というカテゴリーにおいて複数のブランドを展開し、不動の地位を確立している。日本のスーパーマーケットやコンビニエンスストアに、コカ・コーラの商品が多数並んでいる光景はごく当たり前であり、多くの販売店の売り場においてコカ・コーラ製品が占める割合は絶大だ。
コカ・コーラは、「コカ・コーラ」に代表される炭酸飲料をはじめ、コーヒー飲料、お茶系飲料、スポーツ飲料、トクホ飲料に至るまで、複数系統の飲料を消費者に提供している。
お茶系飲料では、烏龍茶、緑茶、紅茶、ブレンド茶とあらゆるジャンルでブランドを展開。コーヒー飲料では、「ジョージア」が国内トップシェアを誇っている。
スポーツ飲料では「アクエリアス」、さらにトクホ飲料では「からだすこやか茶W」というブレンド茶を開発するなど、それぞれのジャンルで代表する商品の展開に成功してきた。
徹底した市場調査とセグメント化で、ブランドのカニバリズムを阻止
コカ・コーラのマルチブランド戦略が成功している要因は、その徹底した市場調査にある。
年齢や性別、多様化する日本人のライフスタイル。それぞれの生活の中で生じるあらゆるニーズを徹底的に分析し、細分化し、それぞれのターゲットに合わせた商品ブランドを次々と開発し続けているのだ。
さらに、消費者の間に定着した既存のブランドを持ちながら、時代の流れに応じて細分化する消費者ニーズに合わせた同ジャンルの新しいブランドを並立させることにも躊躇しない。こうした戦略が、市場拡張と事業の安定化を可能にしているのである。
同一カテゴリー内でブランドが乱立することによるリスクは多分にある。そのひとつに各ブランドの差別化が曖昧なために、同一企業の中でターゲットの取り合いが発生し、消費者の購買行動が分散する現象が挙げられる。いわゆるカニバリズムだ。
しかし、コカ・コーラの各ブランドがターゲットとする消費者層は見事に明確であり、細分化が徹底されている。それゆえ、カニバリズムは起こらない。
ターゲットをとことん明確にすることが、マルチブランド戦略を成功させる鍵なのである。