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日産をV字回復させたゴーン氏の手腕
【コストリーダーシップ戦略の成功事例(2)】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.11.26

文責 : 松山響

この記事のポイント

大胆なコストカットで倒産寸前の日産をV時回復させる

コストリーダーシップ戦略は、マイケル・E・ポーター(MichaelE. Porter)によって提唱された競争戦略の1つ。

競合他社よりも相対的に低コストで製品やサービスを提供することで競争優位性に立つこと。つまり、コストを下げることで低価格を実現し、それを武器に顧客を集める戦略のことを指す。

この戦略を実行するためには、低コストでのモノづくり・サービスづくりが重要であり、高い技術力と同時に、業務効率化やシステム化による社内のコスト削減が求められる。

ゆえにコストリーダーシップ戦略は、市場ですでに高いシェアを誇っている企業や、市場にこれまでなかった全く新しい商品・サービスを展開する企業などが向いていると言われている。

大胆なコストカットで倒産寸前の日産をV時回復させる

日産自動車のCEOに就任したカルロス・ゴーン氏は、「コストカッター」の異名を持つ人間であった。

ゴーン氏は様々なしがらみを無視し、大胆なコストカット実施していった。

当時の日産は工場稼働率が50%近くまで落ち込んでいた。その原因は、乱立するプラットフォームや無駄な業務プロセスによる過剰な人員配置。利益を圧迫するこれらの要因に対し、ゴーン氏は大規模な人員削減や工場閉鎖などを推し進めた。

また、親会社であるルノーとの関係を活かして、部品を共通化することによる購買の統合化を進めていき、部品コストも削減する。

このような取り組みを実施したことで、CEO就任の翌年の決算で最高益を達成することとなり、業績はV字回復。

さらに、新規開発にリソースを集中させることでエクストレイルやノートなどヒット製品を生み出し、また次世代を見据えた電気自動車リーフを発売するなどの挑戦にも投資をする。

こうした従来になかった取り組みも功を奏して、日産のブランドイメージは向上し、利益率のみならず国内の販売シェアも徐々に回復していった。

また、積極的な海外進出もコスト競争力に大きく貢献している。 実際、中国やメキシコといった市場では、日系メーカーに先駆けて進出していき、早くから現地化の活動を実施することで、ブランドを地域に根付かせることに成功。

乱立していた日産の系列メーカーを解体し、資本力と技術力を併せ持つ部品サプライヤ数社まで絞り込むことによって、その部品メーカーとともに海外進出を加速させていく。

これにより、現地化率を向上させることに成功。原価率向上や関税優遇などのメリットを享受し、高いコスト競争力を実現しているのだ。

ゴーン氏が行った改革は、工数の効率化や人員の削減、工場の閉鎖、ルノーとの共同購入、海外展開など多岐にわたる。

ただ、そのいずれもがコストリーダーシップ戦略に基づいていた点は興味深い。この戦略は市場ですでに高いシェアを保持している企業に向いていると言われているが、倒産寸前の企業の回復戦略としても有効であることをゴーン氏は証明したのだ。

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