会社の名前を考えなきゃならない。
僕も経営に参画する会社で、目標とする売上はかなり大きい。野望に満ちた会社である。そういうとき、たいてい「名前は一筆さんで」ということになる。規格が全然違うが、うちに犬がもう一匹来たときもそうだった。妻の一恵ちゃんは「一筆さん、名前よろしくね」と気軽に言った。その気軽さに乗じて気軽な名前をつけると、もっと本気で来いと言われるのだ。名づけ、ネーミングというやつは、気軽に頼まれるわりに気軽にできないシロモノなのである。それは結婚式のウェルカムボードを頼まれる状況に少し似ている。適当でいいから、と言われるのだが、実際には適当にはできない。お祝いごとだから断りづらいのもタチが悪い。
話を戻そう。会社の名前を考えなくてはならないのだ。会社の名前なんてなんでもいいという人もいる。実際、意味のない名前だってたくさんある。メルセデス・ベンツという名前は、創業者のカール・ベンツのベンツとダイムラー社の支援者の娘のメルセデスが合わさってつけられた。スケールはだいぶ違うが、僕の祖父の会社は一筆信三商店という名前だった。会社の名前は人の名前だっていい。会社は人によってできているのだから。
途中で名前を変えることだってできる。株式会社スタートトゥデイが株式会社ZOZOになったのは記憶に新しい。サービスの認知が高まって、会社の名前の位置づけが変わってしまうこともあるだろう。いまのご時世、事業内容が創業時と同じままで進むことの方が少ないのではないかと思ってしまう。スモールスタートで始めたものがモンスターになる時代ではないか。
先日お会いした岩永さんがつけられた日清オイリオという社名を僕は好きなのだが、オイリオという油を意味するワードはもしかすると時代とともに変わって行くことだってあるだろう。事業がオイルだけでなく、たとえば生活用品のようなものをつくるようになったり、もしかするとインフラのような事業展開だってあるかもしれない。となれば事業内容は入れない方が賢明だろう。
会社名をブランド名より重視すべきか。たとえばマイクロソフトという社名はマイクロソフト・ワードというブランド名よりも重みがあるし、たとえば洗剤のタイドというブランド名はP&Gという社名より重要だ。会社名とブランド名の関係もとても重要で、最初に考えておくべき課題である。
アル・ライズ/ローラ・ライズによる『ブランディング22の法則』(投球エージェンシー)では、ほとんどの場合、ブランド名を企業名より重視すべきであるという。消費者はブランドを買うのであって、企業を買うのではないというのが理由だ。ブランド名として企業名だけが使われている場合(GE、コカコーラ、IBM、ゼロックス、インテルなど)、顧客はこれらの名前をブランドとみなしている。
極論、会社の名前は立ち上げる人たちが納得すればいいということだろう。意気込みを込めるもよし、スケール感を伝えてもよし、ということが逆に言えば、好みなどに左右されてしまうこともあり、決めにくさになるのかもしれない。
とりあえず、会社の名前を考えなきゃ。