Datadogとは何かを初心者向けに解説。インフラ監視、APM、ログ、セキュリティ、クラウドコスト管理から、LLM・AIエージェント監視、Bits AI、自動修復まで、2026年の最新機能と活用方法を徹底解説します。
はじめに:Datadogとは?クラウド時代の統合オブザーバビリティ基盤
Datadog(データドッグ)は、クラウドインフラ、アプリケーション、ログ、ネットワーク、ユーザー体験、セキュリティなどのデータを集約し、システム全体を横断して監視・分析できるSaaS型のオブザーバビリティプラットフォームです。
従来の監視ツールはサーバーのCPU使用率やメモリ、障害発生などを確認することが中心でした。しかし、Kubernetes、マイクロサービス、サーバーレス、マルチクラウド、生成AIなどが普及した現在は、単一の監視対象だけを見ても障害原因を特定できません。
Datadogでは、メトリクス、ログ、トレース、プロファイル、セキュリティイベントなどを関連付けて分析できます。そのため「何が起きたか」だけでなく、「どのサービスが影響を受け、なぜ問題が起き、どこから対応すべきか」まで追跡しやすい点が特徴です。
さらに2026年現在は、AIエージェントが調査や運用作業を支援する方向へ大きく進化しています。
Datadogでできること
Datadogの主要機能は、インフラ監視だけではありません。現在は「Observe & Analyze」「Act & Automate」「Secure & Govern」という複数の領域を横断して利用できます。
インフラ監視では、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Kubernetes、コンテナ、データベースなどを一元的に監視できます。APMではアプリケーションのリクエストや分散トレースを追跡し、マイクロサービス間の依存関係やボトルネックを分析できます。
ログ管理では、大量のログを検索・分析しながら、メトリクスやトレースと関連付けて障害調査を行えます。またOpenTelemetryへの対応も進んでおり、DatadogネイティブのテレメトリとOpenTelemetryのメトリクスを同じダッシュボードやクエリで扱えるようになっています。
2025年にはDatadogのインテグレーション数が1,000を超え、AI、セキュリティ、ハイブリッドインフラ、データ基盤などへの対応範囲も拡大しました。
DatadogのAI機能が大きく進化
2026年のDatadogを理解するうえで重要なのが、AIを単なる分析補助ではなく、調査・判断・アクションを支援するエージェントとして活用している点です。
代表例が「Bits AI」です。Bits Chatでは自然言語でシステムについて質問でき、メトリクス、ログ、トレース、モニター、ドキュメントなどを横断して情報を取得できます。さらに、ダッシュボードやノートブックの作成、インシデント調査なども自然言語から実行できます。
「Bits Investigation」はAI SREとしてインシデントを自律的に調査し、関連するコンテキストや根本原因、対応策を提示する機能です。従来の「アラートを通知する監視」から、「アラートを受け取った後の調査まで支援する運用」へ進化していることが分かります。
さらに2026年には「Bits Agent Builder」も登場しました。企業独自のAIエージェントをDatadog上で構築し、データ分析、意思決定、インシデント対応、レポート作成などの業務を自動化できます。Datadogや外部サービスのアクションを組み合わせ、組織で定めたガードレールの中で自動処理を設計できる点が特徴です。
LLM・AIエージェントの監視にも対応
生成AIアプリケーションでは、通常のWebアプリとは異なる監視が必要です。レスポンス時間やエラー率だけでなく、トークン使用量、モデル、プロンプト、レスポンス、推論コスト、エージェントの実行経路などを把握する必要があります。
DatadogはLLM ObservabilityやAgent Observabilityを通じて、AIアプリケーションの性能や品質を可視化する方向へ機能を拡張しています。
DASH 2025では、複数のAIエージェントがどのように連携したかを実行フローとして可視化するAgent Observabilityが紹介されました。OpenAI Agent SDK、LangGraph、CrewAI、Amazon Bedrock Agent SDKなどを利用したエージェントの動作を追跡する仕組みも提供されています。
2026年にはAIエージェントの利用状況を把握するAgent Consoleや、AIエージェントの品質改善を支援するBits Evalsなども発表され、AIシステムの「性能監視」から「品質・利用状況・運用管理」へと対象が広がっています。
セキュリティとオブザーバビリティを統合
Datadogのもう一つの特徴が、監視とセキュリティを分離せずに扱えることです。
Cloud SIEM、Cloud Security、Application Security、Code Security、IaC Securityなどを組み合わせることで、クラウド環境からアプリケーション、ソースコード、インフラ設定まで幅広いリスクを分析できます。
DASH 2025では、Secret Scanning、タグベースのData Access Controls、Security Graph、IaC Security、Cloud SIEMの異常検知やシーケンス検知などが強化されました。セキュリティログについては、Observability PipelinesでOCSF形式への変換にも対応しています。
2026年にはAIエージェントそのものを保護する「AI Guard」や、AIを利用した脅威ハンティングなども発表されました。つまり、AIを監視するだけでなく、AIを使うシステムをどう安全に運用するかという領域にもDatadogの対象が広がっています。
DatadogとFinOps:クラウド・AIコストを可視化
クラウド利用が拡大すると、性能だけでなくコストも監視対象になります。
DatadogのCloud Cost Managementでは、クラウドサービスの利用状況や支出を分析し、コスト削減につながるポイントを把握できます。2025年にはAWS向けのコスト最適化アクションなど、検出した改善ポイントから実際の対応につなげる機能も強化されました。
さらに2026年のDASHでは、クラウドだけでなくAI利用コストを含めた最適化や、コスト削減を自動化する方向性が打ち出されています。コストを「月末に確認する経理データ」ではなく、システム運用と同じように継続的に監視・改善する対象として扱う考え方が重要になっています。
Datadogのメリット
Datadogの大きなメリットは、インフラ、アプリケーション、ログ、ユーザー体験、セキュリティ、AI、コストといった異なるデータを一つのプラットフォームで関連付けられることです。
障害発生時にも、インフラの異常、アプリケーションのエラー、関連ログ、分散トレースを横断して調査できるため、複数の監視製品を行き来する負担を減らせます。
また、AI機能の進化によって、専門的なクエリを自分で作成しなくても自然言語で調査できる場面が増えています。2026年の方向性では、AIが「検索する」「分析する」だけでなく、「調査する」「修復する」まで支援することが大きなテーマになっています。
Datadogのデメリット・導入時の注意点
一方、Datadogは利用する機能やデータ量によってコストが大きく変化するため、導入前の料金設計が重要です。特にログ、APM、カスタムメトリクスなどは利用量を把握したうえで、収集対象や保存期間を設計する必要があります。
また、機能が非常に多いため、単純なサーバー監視だけを目的とする場合には、導入・設定・運用設計が過剰になる可能性があります。
さらに、クラウド上へテレメトリを送信するため、個人情報や機密情報を含むログについては、マスキング、アクセス制御、保存場所、保持期間などを事前に確認する必要があります。
したがって、Datadogを導入する際には「すべてのデータを送る」のではなく、何を監視し、誰が利用し、どれだけ保存するのかを明確にすることが重要です。
2026年のDatadogは「監視」から「自律運用」へ
Datadogの進化を一言で表すなら、ObserveからAct、そしてAutonomous Operationsへという変化です。
2025年のDASHでは、AIを利用した分析や自動化、AIエージェント監視、OpenTelemetry対応、セキュリティ強化などが大きなテーマになりました。
そして2026年のDASHでは、Bits Detectionによる異常検知、Bits Remediationによる問題修復、Bits Database Optimizationによるデータベース最適化など、AIが実際の運用アクションに踏み込む機能が発表されています。Datadogは2026年のイベントで170以上の新製品・機能を発表しており、AIを中心にDev、Ops、Securityを横断するプラットフォームへ進化しています。
今後は、監視担当者が大量のアラートを確認して一つずつ対応するモデルから、AIが異常を検知し、原因を調査し、あらかじめ定義された権限とガードレールの範囲で修復まで実行し、人間は重要な判断や例外対応を担うモデルへ移行していくことが考えられます。
まとめ:DatadogはAI時代の統合運用基盤へ
Datadogは、単なるサーバー監視ツールから、オブザーバビリティ、セキュリティ、AI、コスト管理、自動化を統合するIT運用プラットフォームへと進化しています。
特に2026年はBits Chat、Bits Investigation、Bits Agent Builder、AI Guard、AIエージェント監視、コスト最適化などの機能によって、AIを「監視対象」として扱うだけでなく、AIそのものを運用業務に組み込む段階へ進みました。
今後Datadogを検討する企業では、単に「監視ツールとして便利か」だけを見るのではなく、オブザーバビリティ、セキュリティ、FinOps、AI運用、自動化をどこまで一つの運用モデルに統合したいかという観点から評価することが重要です。
クラウドネイティブ化や生成AIの導入が進むほど、システムは複雑になります。その複雑性を可視化し、分析し、さらにAIによって対応まで自動化するDatadogの方向性は、2026年以降のIT運用を考えるうえで重要なトレンドの一つといえるでしょう。

