2026年6月9日、東京ミッドタウン ホール&カンファレンスで開催された「Dataiku Summit TOKYO 2026」(主催:Dataiku Japan株式会社)に、SiNCEはSilver Sponsorとして出展しました。展示ブースに加え、代表取締役・一筆将人がミニステージに登壇し、「生成AI × オントロジーで実現する、業務を理解するAI」をテーマにお話ししました。本記事では、その登壇の内容を中心にレポートします。
なぜ、生成AIは「現場で使えない」のか
まず、身近な例を挙げました。たとえば生成AIに「このツールを使いたいのですが、どうすれば?」と尋ねると、一般的な使い方は丁寧に教えてくれます。しかし本当に知りたいのは「社内で、誰にどんな承認を取れば使えるようになるのか」という“自社の段取り”です。ここでAIは詰まります。「上司に申請を」と言われても、“あなたの場合の承認者が誰か”まではAIは知らないからです。どれだけ賢くても、生成AIは「御社の業務」を知らない——これが出発点でした。
なぜ、AIは御社の業務を覚えてくれないのか
技術的に学習させることは可能でも、多くの企業は現実的な理由から「覚えさせない」選択をしています。
① 機密情報を外部LLMに渡すリスク
② モデル再学習の高コスト
③ 業務知識は日々変わり再学習が追いつかない
④ 新しいモデルに乗り換えると最初からやり直し
プロンプトに書いても、その場限りで次の会話では忘れられます。
だからLLMがどれだけ賢くなっても、御社の業務知識は理解されないままなのです。
答えは「オントロジー」——業務知識をAIの外に持つ
そこで紹介したのが、オントロジー(業務知識を構造化した“辞書”)を生成AIの外側に持ち、回答のたびに参照させるという発想です。AIに覚えさせるのではなく、参照させる。これなら使うAIが変わっても、知識資産は御社に残ります。
RAGとの違い
よく聞かれる「RAGと何が違うのか」も整理しました。RAGは「この資料はどこ?」と聞けば該当文書を探して提示する仕組み。一方オントロジーは、AIに“業務の意味”を理解させる辞書です。先ほどの承認の例なら「あなたの承認者はこの人」とAIが判断できるようになる——その土台をつくるのがオントロジーだといいます。
オントロジーの中身(例)
- 用語辞書:たとえば「P1」。AIは「駐車場の番号?」と取り違えかねませんが、「P1=最優先プロジェクト」と定義すれば正しく扱えます。最も基本的で、効果が出やすい部分。
- 指標(KPI)定義:「売上」「稼働率」などの計算方法を一意に固定し、最新版の取り違えも防ぐ。
- 業務ルール:「クレーム発生時はまず○○へ連絡」「在庫が一定量を下回ったら発注」など、現場の運用ルールをAIが参照できる形にする。
- 判断ロジック:「この条件のときはこの対応を優先する」といった、ベテランが経験で下している判断を、if-then(もし〜なら〜)の形に構造化する。
どこから始めるか
実践的な順番にも触れました。まずは用語辞書を整え、RAGと組み合わせるところから。ここを押さえるだけでも、生成AIの回答品質は体感で大きく変わるといいます。完璧なデータ基盤を待つ必要はなく、いまある資料から小さく始められる、と。
最後は「LLMの進化を待つのではなく、いま自社の知識基盤を育て始めることが、御社専用AIをつくる近道」と締めくくりました。
ブースで紹介した「Ontology Boost」
この考え方をサービス化したのが「Ontology Boost」です。用語・KPI・業務ルール・暗黙知を構造化して生成AIの外側に構築し、Databricks Genieなどに接続し、推論ログで継続的に精度を高める運用まで、ワンストップで支援します。暗黙知をベテランへの音声インタビューから自動構造化する独自の「Hearing AI」も活用し、最短4週間で知識基盤の入り口を立ち上げられます。
当日の様子・来場者の反応
主催発表によると、当日は600名を超える来場で賑わいました。SiNCEブースにも多くの方が足を運び、「生成AIが社内でうまく活かせていない」という課題について活発に意見が交わされました。同じ悩みに、多くの企業が動き始めていることを実感する一日でした。
まとめ
SiNCEは今後も、AIをPoCで終わらせず“現場で使える状態”にする実装支援に取り組みます。「生成AIに自社の業務知識を理解させたい」とお考えの企業様は、お気軽にご相談ください。

