調整すればいいとは限らないー合流点バイアスとは何か

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はじめに

以前交絡について書きました。AとBに相関が見えても裏で両方に影響している第3の変数Cがあるならその相関は見かけものかもしれない。だからCを調整しましょうという話でした。

そこである疑問が浮かびます。では、多くの変数を入れれば入れるほど良いのでしょうか。

手元にある共変量を全部モデルに突っ込んでおけば、交絡の取りこぼしが減るはずです。しかし、これは危険です。調整することで、本来存在しない相関を作り出してします変数が存在するからです。そしてこれは合流点(collider)と呼ばれるものです。

この記事では、それがどういう仕組みで起きるのか、そして実際のデータ分析でどう紛れ込んでくるのかを整理します。

交絡因子と合流点は、矢印の向きだけが違う

まず構造から見ます。

左が交絡因子です。Cから矢印がAとBの両方に出ていっています。CがAとBを共通に動かすので、AとB自体に関係がなくても相関が観測されます。だからCを調整して経路を塞ぎます。

右が合流点です。AとBから矢印がCに入ってきています。

図の形はほぼ同じで、違うのは矢印の向きだけです。ところがこの差で、取るべき行動が正反対になります。合流点は調整してはいけません。何もしなければAとBは無関係のままなのに、Cで層別した瞬間に相関が生まれてしまうからです。

なぜ交絡が生まれるのか

ある会社の相関を考えます。応募者には「能力」と「学歴」があり、世の中全体ではこの2つに関係はないものとします。会社は両者の合計が一定以上の応募者を採用します。どちらかが飛び抜けていれば片方が低くても受かる、という普通の選考です。

能力→採用←学歴

採用が合流点です。では、社員だけを眺めたらどう見えるでしょうか。

応募者全体では相関はほぼゼロ(r = +0.03)。ところが採用者に絞ると、はっきりした負の相関(r = −0.65)が現れます。

理屈はこうです。採用者の中に「学歴が低いのに受かった人」がいるなら、その人は能力が高いはずです。そうでなければラインを超えられません。逆もまた同じです。結果として、社員の中では「学歴が低い人ほど能力が高い」と観測されます。

人事データだけを見れば「うちは高学歴の社員ほど能力が低い」という結論が出ます。しかし世の中全体では無関係なのですから、完全な錯覚です。社員という母集団を切り出したこと自体が、相関を作り出しています。

医療統計では同じ現象がバークソンのパラドックスとして知られています。入院患者だけを見ると、無関係な2疾患に負の相関が出る、という話です。

「層別している」と気づきにくい

やっかいなのは、層別しているつもりがないのに送別になっているケースです。

先ほどの例で、分析社は特別な操作をしていません。社員データを開いて集計しただけです。それでもバイアスは発生しました。会期式に変数を入れるだけの調整ではなく、データの集め方そのものが層別になり得ます。

  • 生存者バイアス:継続している企業だけ、残っているユーザーだけを見る
  • 回答者バイアス:アンケートに答えてくれた人だけのデータ
  • 完了者のみの分析:最後までやり遂げた人だけを比較する

いずれも都合の悪いデータを除いたわけではなく、そういうデータしか手に入らない状況です。

中間変数との混同にも注意

「調整してはいけない変数」はもうひとつあります。中間変数です。

治療→血圧→心疾患

治療の効果を見たい時に血圧を調整すると、治療が血圧を下げて心疾患を防ぐ経路が消えます。合流点が「ないものを作る」失敗なら、こちらがあるものを消す失敗です。

判断の仕方

データを見ても、交絡因子なのか合流点なのかは判別できません。相関係数もVIFも特徴料重要度も役に立ちません。区別しているのは矢印の向きであり、それは統計量の中に入ってないからです。

頼れるのはドメイン知識だけです。だからこそ、変数を選ぶ前にDAGを描くという手順に意味があります。

  • 分析したい2変数と、手元の共変量を書き出す
  • ドメイン知識で矢印を引く
  • 矢印が出ていく変数(交絡因子)は調整する
  • 矢印が入ってくる変数(合流点)と、経路の途中の変数(中間変数)は調整しない

地味ですが、共変量を全部投入するよりかは安全です。

まとめ

  • 交絡因子と合流点は矢印の向きだけが違い、取るべき行動は正反対
  • 合流点で層別すると、存在しなかった相関が生まれる
  • 意識的に調整しなくても、データの集め方が層別になっていることがある
  • どれに当たるかはデータからは判別できない

なお、予測だけが目的で因果を問わないなら、合流点を入れても構いません。問題になるのは「なぜ」を知りたいときだけです。

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