BigQuery Omniとは?マルチクラウド時代のデータ分析を変える仕組みと活用法

BigQuery Omniは、Amazon S3やAzure Blob Storageに保存されたデータをBigQueryから分析できるマルチクラウド分析機能です。BigLakeとの連携、データを移動させないクエリ、セキュリティ、料金、制約、AI時代の活用方法まで、2026年時点の最新情報をもとにわかりやすく解説します。

目次

はじめに:マルチクラウドで本当に難しいのは「データを集めること」

企業のクラウド活用が進む一方、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudを用途ごとに使い分ける企業では、データが複数のクラウドに分散するという問題が起こります。

たとえば、購買データはAmazon S3、業務データはAzure Blob Storage、分析用データはBigQueryという構成です。この状態で全社横断の分析を行おうとすると、データを一つの場所へコピーするETLやデータ転送、権限管理、同期処理などが必要になります。

BigQuery Omniは、こうした「データを一カ所へ集めなければ分析できない」という問題を解消するためのBigQueryのマルチクラウド分析機能です。

現在のBigQuery Omniでは、Amazon S3やAzure Blob Storage上のデータをBigLakeテーブルとして定義し、BigQueryのGoogleSQLを使って分析できます。データそのものをGoogle Cloudへ移動させずに、保存場所を維持したまま分析できることが大きな特徴です。

1. BigQuery Omniとは?

BigQuery Omniは、Google CloudのBigQueryからAWSやAzureに存在するデータを分析するためのマルチクラウド機能です。

重要なのは、BigQuery Omniを「AWSやAzureのデータをBigQueryへコピーするサービス」と考えないことです。基本的な考え方は、データを元のクラウドに保持したまま、BigQueryの分析インターフェースからアクセスすることにあります。

具体的には、Amazon S3やAzure Blob Storageに保存されたデータに対してBigLakeテーブルを作成します。すると、そのテーブルを通常のBigQueryテーブルに近い形でGoogleSQLから扱えるようになります。

さらにBigQuery Omniでは、BigQuery側のデータとOmniリージョン側のデータをJOINする仕組みも提供されています。つまり、AWSやAzureのデータとGoogle Cloud上のデータを、SQLベースで横断的に分析できます。

2. どのような仕組みでデータを分析するのか

BigQuery Omniの構成を理解するうえで重要なのが、BigLake、外部接続、Omniリージョンの3つです。

まずBigLakeは、外部ストレージに存在するデータをBigQueryからテーブルとして扱うための仕組みです。Amazon S3とAzure Blob StorageについてはBigQuery Omniを利用して接続できます。

次に、AWSやAzure側のストレージへアクセスするためのConnectionを設定します。AWSではIAMを利用してアクセス権限を設定し、AzureではWorkload Identity Federationを利用した認証構成も可能です。Azureではアプリケーションのクライアントシークレットを管理せずにGoogleサービスアカウントとの連携を構成できます。

そしてクエリは、対象データに対応したBigQuery Omniリージョンで処理されます。2026年時点では、AWSの米国・欧州・アジア太平洋など複数リージョンに加え、Azure East US 2が対応しています。

この設計により、「データを中央のデータウェアハウスへコピーしてから分析する」という従来型の方式とは異なるアプローチを取ることができます。

3. BigQuery Omniで何が変わるのか

最大のメリットは、データの保存場所と分析基盤を必ずしも一致させなくてよいことです。

たとえばAWS上の販売データをS3に保存し続けながら、Google CloudのBigQueryから分析できます。さらにBigQuery側にあるマーケティングデータなどとJOINすれば、クラウドをまたいだ分析も可能です。

これは特に、すでに複数クラウドへデータが分散している企業にとって重要です。既存データをすべて移行するプロジェクトを開始しなくても、必要なデータから横断分析を始められるためです。

またBigLakeでは、外部データへのアクセスをBigQueryテーブル側で管理できます。BigLakeのアクセス委任によって、基盤ストレージそのものへの直接アクセス権をユーザーごとに付与するのではなく、BigQuery側でテーブル単位の権限制御を行える設計になっています。行レベル・列レベルのセキュリティにも対応しています。

つまりBigQuery Omniの価値は、単純な「マルチクラウド接続」だけではありません。

データの移動を減らしながら、SQL、権限管理、分析環境を統一することにあります。

4. 主な活用シーン

EC・小売業の横断分析

AWS上の購買履歴とGoogle Cloud上の広告・マーケティングデータを組み合わせれば、顧客獲得から購買までの分析を横断的に行えます。

データをすべて一つのクラウドへ移行するのではなく、既存のデータ配置を維持したまま必要な分析を実行できる点がポイントです。

グローバル企業のデータ分析

地域や部門によって異なるクラウドを利用している企業では、データを無理に一カ所へ集約することが難しい場合があります。

BigQuery Omniを利用すれば、対応するAWS・Azureリージョンにデータを保持しながら、BigQueryを共通の分析インターフェースとして利用する設計を検討できます。

データレイクを活用した分析

S3やAzure Blob Storageをデータレイクとして利用している企業では、既存データをBigQueryへ大量コピーすることなく、BigLakeテーブルとして分析環境に組み込めます。

特にParquet、Avro、ORC、CSVなど複数の形式に対応しており、AWS S3ではDelta LakeやIcebergなどもサポート対象に含まれています。

5. BigQuery Omniのメリットと注意点

BigQuery Omniのメリットは、第一にデータ移動を前提としないマルチクラウド分析です。大量データをクラウド間でコピーする必要性を減らせるため、移行プロジェクトの負担を抑えられます。

第二に、BigQueryのGoogleSQLを共通インターフェースとして利用できることです。AWSやAzureに分散したデータを、BigQueryの分析環境から扱えることは、利用者側の学習コストや運用の複雑化を抑える要因になります。

一方、注意すべき点もあります。

まず、BigQuery Omniは「どんなデータでも完全に透過的に扱える」というサービスではありません。対応リージョン、データ形式、SQL機能、BigLakeの制約などを事前に確認する必要があります。

また、データ転送が完全になくなるとは限りません。特にクラウドをまたぐJOINやクエリ結果の扱いでは、データ量や処理方法を考慮した設計が重要です。

さらに、料金についても「データを移動しないから必ず安い」とは限りません。クエリの実行量、処理方式、各クラウド側のネットワークやストレージコストなどを含めて、実際のワークロード単位で評価する必要があります。

6. BigQuery OmniとAI時代のデータ基盤

BigQuery Omniを考えるうえで、今後さらに重要になるのがAIとの組み合わせです。

2025年以降のBigQueryは、単なるデータウェアハウスではなく、構造化・非構造化データを扱いながらAIやエージェント型分析につなげる「データからAIまで」のプラットフォームへと進化しています。Google CloudもBigQueryをAI・検索・エージェントなどを支えるデータ基盤として位置づけています。

この流れでは、「AIモデルをどこに置くか」だけでなく、AIが参照する企業データをどのように統合・管理するかが重要になります。

AWS、Azure、Google Cloudにデータが分散した状態でも、BigQuery OmniとBigLakeを組み合わせれば、既存のデータ配置を尊重しながら分析基盤を構築する選択肢が生まれます。

その意味でBigQuery Omniは、単なるマルチクラウド向けSQL機能ではなく、今後のデータ・AI基盤における「データ配置と分析環境を分離するための技術」として見ると、その価値がより理解しやすくなります。

まとめ:BigQuery Omniは「データを集める」発想を変える

BigQuery Omniの本質は、AWSやAzureのデータをGoogle Cloudへ移行することではありません。

データが存在する場所を維持しながら、BigQueryを共通の分析インターフェースとして活用することにあります。

特にBigLakeとの連携によって、Amazon S3やAzure Blob StorageのデータをBigQueryからSQLで扱えるだけでなく、BigQuery側のデータとのJOINやテーブル単位のアクセス制御も可能です。

一方で、対応リージョンやデータ形式、料金、クロスクラウド処理の特性などを理解したうえで導入することが重要です。

これからのデータ基盤では、「すべてのデータを一つの場所に集める」ことだけが正解とは限りません。BigQuery Omniは、データを無理に移動させるのではなく、分散したまま価値を引き出すというマルチクラウド時代の新しい分析アーキテクチャを実現する重要な選択肢の一つです。

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