はじめに
血圧が高い人を集めて、ある薬を二週間飲んでもらったところ、平均血圧が下がっていました。この薬は効いたといえるでしょうか?
実は、薬が何もしていなくても、血圧が高い人を選んだだけで、平均は下がって見えることがあります。この現象を「平均への回帰」と呼びます。この記事では、数式を使わずに、なぜ起こるのか、どう避けるのかを整理します。
測定値は「本当の値+その日の偶然」
体重計に続けて乗ると、毎回少し違う値が出ます。血圧も同じで、直前の動きなどで、測るたびに上下します。そこで、測定値は次のように考えられます。
測定値=本当の値+その日の偶然のばらつき

大事なのは、偶然は測るたびに変わるということです。
なぜ極端な人は次に平均へ寄るのか
1回目で血圧が高かった人の中には、本用に高い人と、本当はそこまで高くないのに偶然が高めに出た人が混ざっています。極端に高い人ほど、後者の割合が増えます。極端な値は「本当の値が高い」ことと「偶然が高めに出た」ことが重なって、初めて出やすいからです。
ところが、偶然は2回目には同じように出ません。後者の人たちは、2回目には偶然が消えて、値が平均に近づきます。薬を飲んだかどうかは関係ありません。
逆に、1回目で低かった人たちを選べば、2回目は「極端な値」を基準に選んだことから起こります。
なお、測定のブレが起こりやすい指標ほど、この見かけの変化は大きくなります。
どうやって避けるのか
基本は、比べる相手を置くことです。同じ基準(1回目で血圧が高かった人)で選んだ人を、薬を飲む群と、飲まない群(対照群)に分けます。2つの群は同じ基準で選ばれているので、平均への回帰も同じだけ起こります。

対照群も、薬を飲んでいないのに下がります。これが平均への回帰の分です。薬の効果は、飲む群の下がり方から、対照群の下がり方を引いた差として考えます。薬の群だけをみて「下がった」と言うと、効果を過大に評価してしまいます。
ここで、対照群が「同じ基準で選ばれている」ことが大切です。薬の群は血圧が高い人、対照群は普通の人、という選び方では、回帰の大きさが違うので、比較になりません。
まとめ
- 極端な値を基準に選ぶと、偶然の分だけ、次の判定では平均に近づいて見える。
- この変化は治療の効果とは無関係に起こる。
- 測定がぶれやすい指標ほど、見かけの変化は大きい。
- 対処の基本は、同じ基準で選んだ対照群と比べること。
臨床実験だけでなく、健診データや、リアルワールドデータ(RWD)で治療前後を比べるときにも、同じ落とし穴があります。交絡と同じく、比較が公平でなくなる問題ですが、原因は「極端な値で選ぶ」ことにある、という点が違います。
